発達障碍者の七転八倒記

漢方薬を試したり、施設行ってみたり、それでも無茶やってみたりする人間が時々書くブログ

シャープのおじさんの話

今、色々ありまして、色々考えているんですが。

その流れで昔の事を思い出してしまいました。

少し書かせて頂きたく思います。

 

ちょっと前、シャープが鴻海に買収されるかどうか云々言っていた頃

私はシャープの販売員をしていました。

具体的な勤務地とか売場とかは控えますが…家電量販店の売り子さんです。

売り場には他にも当然H社が常勤でいらっしゃって、土日とかにはP社さんとかも来てました。取り敢えず私はH社の人から「フェアの時はそれぞれの社に協力する」と聞かされていたので、その通りにしていました。

しかしシャープの二回目のフェアになった時、お店の社員様に許可を取ってシャープのカタログを棚の一番上に置いた事で、H社の方にカタログを撒き散らされて怒鳴られました。

割と長かったので要約すると「このクソ三流メーカーが。お前なんて私のネットワーク使って二度とどの店でも働けないようにしてやる。舐めんじゃねぇぞ。」

いやぁ社員様から許可取ってるのに何でおめぇがそこまで切れるん?と思いつつ、社員様にその事を告げてみるも「だからと言って私達からは彼女に『それはダメです』とは言えません。」と返答をもらう。まぁ店側なのでメーカー販売員に不干渉なのは仕方ないと言うか、そうじゃなきゃ確かにダメだよねと思ってその場は引き下がりました。

問題はこのあと。当然販売店にはメーカーの担当営業がいます。大分長い事働いてらっしゃる方で、大半の髪が白髪になっています。お盆明けにその方に相談。まぁメーカーについても相当罵詈雑言あったり、私もぶっちゃけ『や』の付く自由業の方がニヤリと笑いそうな恫喝喰らってるわけなので、担当営業さん唇震えてました。

しかし、その時私は間の悪い事に報連相に問題があってシャープ本部で騒ぎになりまして、逆に「お前がそんなに頑張ったって、あんな報告じゃ誰もそんな苦労なんてわからないんだぞ!」と店の非常階段で怒鳴られる事に。

しかも翌日にはなんと「その販売員と話してみたけど、大丈夫そうだから問題ないよ。」と笑顔でけろっと回答。

(…あぁこれアカン。私守って貰えない奴か。)

と正直思いました。そりゃ営業にはニコニコするだろう販売員だもの。

最早これまで。シャープは私が居られる所じゃない。

しかしそれでもこのお店の中に「シャープ」を根付かせるまではまだ辞めたくない。当時私はT芝から捨てられた人間だったので、それでも拾ってくれた企業に何の貢献もせず辞めたくなかった。せめて三ヶ月。その間H社さんに散々意地悪されようが必死にシャープを根付かせて終わろうと思ってた。

…んだけど、鴻海うんたら関連なのか、私も首切りが決定。

気合入れて仁王立ちした所に後ろから首を斬られて苦笑いしたけれど、残り一ヶ月をせめて頑張ると言う方針で挑む事にした。

でもその一ヶ月、P社さんや店舗様の御協力も頂いて、終わる直前、営業担当のおじさんから報告された成績は「フラッグシップ機種販売額前年対比485%」。

御陰様の御陰様で、そこそこの成績を以て卒業する事が出来たわけでした。

 

最終日でした。派遣側の担当と最後に港区の例のビルに行って、御挨拶をしようと。

思う処はあるけれど、シャープの営業担当のおじさんとも笑顔で御挨拶してお別れしましょうと思って、プラズマクラスターの出る例の高層エレベーターの前で、「お世話になりました」と言った訳です。

相変わらず派遣側の担当さんとは笑顔でしゃべってた営業担当のおじさんですが、最後私が挨拶した時に、なんか突然私の両肩をがっちりつかむわけです。それも顔がいきなり見た事も無いくらいの仁王みたいな怒りに満ちた顔をしている。

「絶対に、負けるんじゃないぞ…!」

絞り出すような声に対して、突然の事に戸惑った私は

「はい。」

と笑顔で応えるしかありませんでした。

 

あの時はさっぱりわからなかったけれど

今となっては思う。

怒らない訳が無い。恨まないわけも無い。

彼らは色々なもののために自らの怒りを押し殺し、ただ仕事をするためにそこにいる。

我儘は許されない。愛社を持つなら猶の事、被害を拡大させるわけにも行かない。

見ていた訳でも無いが、もしかしたらその「もう大丈夫」は、課長たる自分が派遣社員でしかない私をその店に置くために、他社とは言え派遣如きに頭を下げた上での「もう大丈夫」かもしれなかったのだ。

 

最近色々あって精神擦り切れて来てるんだけど

あの絞り出すような声を思い出すと、ただ終わる訳には行かないと今でも思う。

彼らの背中は酷くか細い。ただ笑っているだけで酷く心許ない気さえする。

しかしその仏の顔が明王の如き覚悟に支えられたものであったと知ると、自分とて簡単に負けるわけにはいかない。と思ってしまうのである。